坂の由来
ふむ、かめわり坂か。実はこの坂、地図の上ではもう存在しないのじゃ。江戸切絵図には確かに名が記されておるが、坂学会の記録にも「現状:なし」とはっきり書かれておってな。名前の由来も独特で、「かめ」は瓶ではなく「腹」のことを指し、「腹が割れる」=子が生まれることを意味する言葉だったという(横関英一『江戸の坂 東京の坂』より)。
跡地を実際に測ってみると、面白いことがわかった。完全に平らになったわけではなく、区間の中央あたりが一番高く、そこから両端へ緩やかに下っていく、山のような形が今もわずかに残っておるのじゃ。標高差はわずか1.8m、傾斜も5%に満たない程度で、もはや「坂」と呼べるほどのものではない。じゃが、これが往時の坂の名残なのか、単なる盛土や道路整備の結果なのか、正直なところわしにも判別はつかん。
かつてこの地には東京厚生年金会館というホールがあってな、1961年から2010年までの約半世紀、多くのコンサートや催しが開かれておった。今は解体され、駐車場になっておる。坂の名残も、会館の記憶も、地表からはほとんど消えてしまったが、こうして名前だけが今も語り継がれておるのは、なかなか味わい深いことだと思わんか。
